ひとりで回る商売の設計図 — フロントからバックエンドまで

「今月はいい仕事が取れた。でも来月の予定は白紙」。ひとりで商売をしていると、この波に心当たりがあるのではないでしょうか。忙しい月と不安な月が交互に来て、忙しい月には営業ができず、不安な月には目の前の仕事がない。私も長いあいだ、この波の上にいました。頑張りが足りないのだと思っていましたが、いま振り返ると、原因は頑張りではなく構造でした。この章では、第1章で決めた「誰の役に立つ人か」を、ひとりで無理なく回る売上の形に組み立てていきます。読み終えるころには、入口から継続までがつながった自分の商品構造を、一枚の設計図として描けるはずです。

目次

2-1 商品構造の設計:フロント→ミドル→バックエンド

一発売り切りがひとりビジネスを消耗させる

かつての私は、商品を実質一つしか持っていませんでした。制作の仕事なら制作一式。一つの商品を、毎回新しいお客様に売る。「一発売り切り」の形です。

この形の何がつらいかというと、毎回ゼロから信頼を積み直さなければならないことです。初めての人に、いきなり本命の商品を買ってもらうのは難しい。だから成約までの説明に時間がかかり、成約率も上がらない。しかも納品が終わると関係も一区切りついてしまって、次の月にはまた新しい人を探すところから始まる。冒頭の「忙しい月と不安な月の波」は、まさにこの構造から生まれていました。当時の私は自分の営業力を疑っていましたが、いまなら過去の自分にこう言えます。あなたの力の問題ではなく、構造がそうなっているだけだ、と。

三階建ての商品構造とそれぞれの役割

消耗しない形を探して行き着いたのが、商品を三階建てにすることでした。フロント、ミドル、バックエンド。役割はそれぞれ違います。

フロントは、入口です。無料か、ごく低額で、初めての人が気軽に受け取れるもの。役割は売上ではなく「出会いを接点に変える」ことです。ミドルは、フロントで接点ができた人が、次に一歩踏み込むためのもの。数千円から数万円で、あなたの仕事ぶりを体験してもらう。役割は「信頼を確かめてもらう」ことです。そしてバックエンドが、あなたの本業です。本来の価格で、本来の価値を提供するもの。役割は「深く長く付き合う」ことです。この三つが階段になっていると、お客様は無理なく上がってこられますし、こちらも毎回ゼロから信頼を積み直さなくて済みます。

【図解予定】三階建ての図。1階「フロント(無料・低額)=出会いを接点に」、2階「ミドル(数千〜数万円)=信頼を確かめる」、3階「バックエンド(本業)=深く長く付き合う」。右側に矢印で「上がるほど人数は減り、関係は深くなる」。

サービス業・コンサル業での具体例

具体例を挙げます。いまの私の場合、フロントはこの本や特集サイトの記事、そして半自動レベル診断です。無料で受け取れて、読んだ人が自分の現在地を知れる。ミドルは、診断結果をもとにした個別相談や、少人数の勉強会。ここで私の考え方と人柄を確かめてもらいます。バックエンドは、半自動セールス設計のコンサルティングと、それを回すための道具の導入支援です。

他の業種に当てはめると、たとえば士業なら、フロントは「よくある質問に答える小冊子」、ミドルは「30分の初回相談」、バックエンドは「顧問契約」。コーチングなら、フロントは「セルフチェックシート」、ミドルは「体験セッション」、バックエンドは「3か月の継続プログラム」。施術なら、フロントは「姿勢の無料チェック」、ミドルは「初回お試し」、バックエンドは「回数券や定期通院」。業種が違っても、階段の形は同じです。あなたの商売では、この三段はそれぞれ何になりそうでしょうか。いま思いつかなくても大丈夫です。私も、フロントに置くものが見つかるまで、ずいぶん時間がかかりました。

2-2 時間・単価・工数の方程式:ひとりで回る売上構造

稼働時間の上限から逆算する

三階建ての商品ができたら、次は数字の設計です。認めたくないことでしたが、ひとり経営者の売上には、はっきりした上限があります。自分の稼働時間です。

売上は、単価×件数で決まります。そして件数は、一件あたりの工数×稼働時間で上限が決まります。たとえば、月に使える時間が160時間で、そのうち納品に使えるのが100時間、一件に20時間かかるなら、受けられるのは月に5件まで。この5件にいくらの単価をつけるかが、月商の上限を決めます。私は長いことこの計算をせずに、「もっと頑張ればもっと売れる」と思っていました。その結果が、繁忙期に体調を崩し、閑散期に不安になる、の繰り返しです。もしまだ計算したことがなければ、一度だけ、自分の上限を数字にしてみてください。少し怖い作業ですが、ここから先の判断が全部楽になります。

単価を上げる以外に道がない理由

上限を計算すると、たぶん私と同じことに気づきます。「件数を増やす余地が、ほとんどない」。ひとりでやる以上、件数はすぐ天井に当たります。残る道は、単価を上げるか、一件あたりの工数を減らすか、その二つしかありません。

単価を上げると聞くと、「値上げなんてしたらお客様が離れる」と身構えますよね。私も震えながら値上げをした側なので、その気持ちはよくわかります。ここで支えになるのが、第1章の価値定義です。誰の、どんな痛みを、どう解決するのかが明確な人は、「安いから」ではなく「この人だから」と選ばれます。そういう選ばれ方ができているなら、単価は上げられます。逆に、価値定義が曖昧なまま値上げだけすると、たしかにお客様は離れます。値上げの前に、選ばれる理由を固める。私が身をもって学んだ順番です。

「忙しいのに儲からない」の構造分析

「忙しいのに儲からない」。かつての私の口癖です。そして、自分の一か月の時間の使い方を記録してみて、原因がわかりました。この状態には、だいたい三つのゆがみのどれかが潜んでいます。

一つ目は、フロントとバックエンドの区別がなく、本来バックエンドの価格で提供すべきものを、フロントの価格で受けている。つまり単価が低すぎる。二つ目は、一件あたりの工数が見積もりより膨らんでいる。追加対応や打ち合わせが積み重なって、20時間の想定が35時間になっている。三つ目は、納品以外に取られる時間、たとえば見積もりや提案や事務が多すぎて、納品に使える時間が想定より少ない。私の場合は三つ目で、提案書づくりに想像以上の時間を使っていました。提案の型を決めて工数を減らしたら、それだけで波がだいぶ穏やかになりました。ご自身がどれに当てはまるかは、一か月の記録がすぐに教えてくれます。

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第3章 相手はいまどの段階か — パーセプションで考える顧客理解

商品の階段ができたら、次はお客様がその階段のどこにいるかを見る目を養います。名刺交換の直後に売り込んで場を凍らせた私の失敗談から始めます。

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この記事を書いた人

株式会社ねこすけの代表をしています。
2005年に創業しWebマーケティングを実践するためのコンサルティング、サイト構築、サイト運用、システム開発を行っています。
会員・顧客属性を利用したコンテンツ管理を得意としており、協会サイト、多ブランドのECサイト、会員向けコンテンツサイトなどを構築運営しています。Webマーケティングのパートナーがほしいと感じている方、ご相談ください。
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