「AIを使ってみたけれど、当たり障りのない答えしか返ってこない」。よく聞く感想で、かつての私の感想でもあります。同じAIを使っているのに、返ってくるものの質が人によってまるで違う。その差は、才能でもITの知識でもなく、頼み方、つまりプロンプト(AIへの指示文)の技術です。この章では、本書のあちこちで使ってきたプロンプトの背後にある型を、壁打ち・生成・添削・分析の四つに整理してほどきます。読み終えると、これまでの章のプロンプト例が、暗記するものではなく、自分で組めるものに変わっているはずです。
33-1 壁打ちプロンプトの型:前提→制約→問い
良い壁打ちは前提の渡し方で決まる
壁打ち(考えごとの相手をしてもらう使い方)の質は、問いの鋭さより、前提の渡し方で決まります。
当たり障りのない答えが返ってくる原因は、ほぼ一つで、前提を渡していないからです。「集客のアイデアをください」と聞けば、世間一般の集客論が返ってくる。当然です。AIは、あなたの商売を知りません。「私はひとりで◯◯業をしていて、お客様は主に交流会で出会った△△の方々。広告は使わず、月一の配信と個別フォローが軸。いまの悩みは□□」。ここまで渡して、初めてAIはあなたの壁打ち相手になります。第21章の話題出しプロンプトが「相手の記録」を丸ごと渡していたのは、この原理です。型にすると、前提(私は誰で、状況はこう)→制約(守りたい条件)→問い(考えたいこと)。プロンプトの上達とは、実は、自分の状況を言語化する力の上達なのです。
「答え」ではなく「観点」を求める
壁打ちでは、問いの立て方にもコツがあります。答えを求めるのではなく、観点や選択肢を求めることです。
「どうすればいいですか」と聞くと、AIはもっともらしい一つの答えを、自信ありげに返してきます。これを鵜呑みにするのは、第32章の線引きで言えば、判断を渡してしまう使い方です。私の聞き方は、こうです。「考えられる選択肢を五つ、それぞれの利点と注意点つきで」「この計画の穴を、あえて厳しく三つ指摘して」「私が見落としていそうな観点は?」。選択肢を広げさせ、反対意見を言わせ、見落としを探させる。決めるのは、机の全体を見た自分です。AIを「答えをくれる先生」ではなく「観点を並べてくれる参謀」として使う。この構えの違いが、壁打ちの成果をいちばん大きく左右します。
往復で深める:一発回答を期待しない
もう一つ、壁打ちを浅くする誤解が、「一回で良い答えを引き出そう」とすることです。プロンプトは一発勝負の呪文ではありません。会話です。
最初の返答は、たたき台にすぎません。そこから、「三つ目の案を深掘りして」「それは私の商売には合わない。理由は◯◯。この条件だとどうなる?」と、返しながら絞り込んでいく。とくに効くのが、否定の返しです。合わない理由を言語化して返すたびに、AIの提案はあなたの現実に近づき、同時に、あなた自身の考えも輪郭を持ち始めます。壁打ちの本当の成果物は、AIの最終回答ではなく、往復の中で言語化された自分の考えです。相談相手と一時間話して頭が整理される、あの体験を、いつでも呼び出せるのが壁打ちの価値。だから、五往復して答えが出なくても、思考が進んだなら、その壁打ちは成功なのです。
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型を覚えたら、あとは実践です。ひとり経営者の営業の場面ごとに、私が実際に使っているプロンプトを、レシピ集としてまとめてお渡しします。
