誰の、どんな課題を、どう解決するのか — 価値定義のつくり方

「SNSを頑張ったほうがいいのか、メルマガを始めたほうがいいのか、それとも交流会を増やすべきか」。もしいま、この種の問いが頭の中をぐるぐる回っているなら、その感じは私にもよくわかります。私自身、何年もその問いの中にいました。そして遠回りの末にわかったのは、この問いには手前にもう一つ、先に答えるべき問いがあるということでした。「自分は、誰の、どんな課題を、どう解決する人なのか」。ここが一文で言えるようになると、施策の問いの多くは自分で答えが出せるようになります。この章では、その一文を、あなた自身の言葉でつくるところまでを一緒にやっていきます。

目次

1-1 すべての施策より先に決めること:課題→顧客→提供価値の順番

施策の迷子は、ここを飛ばすから起きる

施策の迷子、という言い方を私はよくします。SNSを始めては止め、ブログを書いては止め、次は動画だと聞いて機材を買う。どれも間違ったやり方ではないのに、どれも続かず、どれも手応えがない。偉そうには言えません。機材を買ったのは、ほかでもない私です。

止まってから気づいたのですが、私は施策を選ぶ前の段階を飛ばしていました。「自分は誰の役に立つ人なのか」を決めていなかったのです。ここが決まっていないと、SNSで何を発信するかも、メールに何を書くかも、交流会で何と自己紹介するかも、毎回ゼロから考えることになります。だから続かない。施策が悪いのでも、飽きっぽいのでもなく、施策を判断する基準がなかった。基準がなければ、誰でも迷子になります。もしあなたがいま迷子の中にいるなら、責めるべきはあなたではなく、基準の不在です。

課題→顧客→提供価値の順番

では、何をどの順番で決めればいいのか。私がたどり着いたのは「課題→顧客→提供価値」の順番です。まず、世の中にどんな困りごとがあるか。次に、その困りごとを抱えているのは具体的にどんな人か。最後に、その人に自分が何を提供できるか。

私の場合、出発点は自分の困りごとでした。「交流会で出会った人のフォローが、そのままになってしまう」。周りを見ると、同じことで後ろめたさを抱えている一人経営者が、想像以上にたくさんいました。営業チームを持たず、交流会には熱心に出ている人たちです。その人たちに私が提供できるのは、丁寧さを保ったままフォローを仕組みにする方法と、それを回すための道具でした。課題、顧客、提供価値。この三つが一列に並んだとき、初めて「誰の、どんな課題を、どう解決するのか」が一文になりました。

商品から考え始める失敗パターン

順番を逆にすると、どうなるか。これも身をもって知っています。多くの人と同じように、私も最初は「自分にできること」、つまり商品から考え始めました。Webがつくれる、集客の知識がある。だからそれを売ろう、と。

商品から始めると、「それを必要としている人は誰か」があとづけになります。すると、誰にでも当てはまるようで誰にも刺さらない説明になる。当時の私の自己紹介は「Webのことなら何でもやります」でした。交流会で言っても、返ってくるのは「へえ、そうなんですね」。相手の中に「あ、それ自分のことだ」という反応が起きないのです。商品はあとから変えられます。でも、誰のどんな課題に向き合うのかをあとから変えると、それまでの発信も人脈も積み直しになります。私はその積み直しをやった側なので、先に決めることを、心からおすすめします。

1-2 ペルソナ設計:属性ではなく「状況と悩み」で描く

「40代・経営者・男性」では何も見えない

理想のお客様を描くとき、まず出てくるのが属性です。40代、経営者、男性、年商3千万円。私も昔、こういう条件を並べて、顧客像を描いた気になっていました。そして、その像に向けて書いた文章は、見事に誰にも届きませんでした。

いま思えば当然で、属性が同じでも困りごとはまったく違うのです。同じ「40代の経営者」でも、順調に成長していて人手が足りない人と、売上が落ちていて何とかしたい人では、必要な言葉も、届けるべき内容も正反対です。属性で描いたペルソナ(想定するお客様像)に向けて発信すると、どちらにも当てはまるように書くしかなくなり、結果としてどちらにも届かない。私の文章が届かなかったのは、文章力の問題ではなく、宛先の描き方の問題でした。

状況で描く:どんな夜に、何を検索するか

属性の代わりに何で描くか。私が行き着いたのは「状況と悩み」です。使っている問いは、「その人は、どんな夜に、何を検索するか」。

たとえばこの本の読者を、私はこう描いています。交流会から帰ってきた夜、もらった名刺を机に置く。今日話した人の顔を思い出しながら、「明日お礼を送ろう」と思う。でも翌日は納品で手いっぱいになって忘れ、三日後に名刺を見て少し後ろめたくなる。そんな夜に、スマホで「交流会 フォロー 続かない」と検索している人。——お気づきかもしれませんが、これは序章に書いた、かつての私の姿でもあります。ここまで描くと、その人に何を言えばいいかが、はっきりしてきます。「あなたのせいではありません、仕組みがないだけです」と言ってあげたくなる。ペルソナとは、属性の一覧ではなく、声をかけたくなる一人の姿のことだと、私は思っています。

たった一人のモデルを決める勇気

状況で描くとき、多くの方がためらうのが「一人に絞ること」です。絞ったら、それ以外の人を取りこぼすのではないか。私も長いあいだ、その不安から絞れませんでした。

でも、実際にやってみると、逆のことが起きました。一人に向けて書いた言葉は、同じ状況にいる大勢に届くのです。「交流会から帰った夜の後ろめたさ」を書けば、その経験がある人はみんな「自分のことだ」と感じてくれる。一方、全員に向けて書いた言葉は、誰の状況にも当てはまらず、誰も反応しない。ですから、ペルソナは実在の一人をモデルにすることをおすすめします。過去のお客様でも、交流会で会ったあの人でも、かつての自分でもいい。その人の顔を思い浮かべて書けるかどうかが、届く言葉と届かない言葉の分かれ目でした。

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第2章 ひとりで回る商売の設計図 — フロントからバックエンドまで

誰の役に立つ人かが決まったら、次はその価値を「ひとりで回る売上」に変える設計図です。一発売り切りで消耗していた私の反省も込めて、入口から継続までがつながった商品構造を一緒につくっていきます。

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この記事を書いた人

株式会社ねこすけの代表をしています。
2005年に創業しWebマーケティングを実践するためのコンサルティング、サイト構築、サイト運用、システム開発を行っています。
会員・顧客属性を利用したコンテンツ管理を得意としており、協会サイト、多ブランドのECサイト、会員向けコンテンツサイトなどを構築運営しています。Webマーケティングのパートナーがほしいと感じている方、ご相談ください。
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