開封され、読まれ、動いてもらう — メールライティング

シナリオという設計図ができても、届くのは結局、一通のメールです。そして受信箱の中で、あなたの一通は、何十通の中の一通にすぎません。開かれなければ読まれず、読まれなければ動いてもらえない。私は長年、たくさんのメールを書いてきましたが、読まれるメールを書けるようになったのは、才能でも文才でもなく、型を覚えてからでした。この章では、件名、本文、パーソナライズ、物語、そして締めの一文まで、私が使っている型をお見せします。うまく書けない時期の私の失敗作も、そっと添えながら。

目次

12-1 開封される件名の法則

件名の仕事は「開けてもらう」だけ

まず件名です。ここで、力の入った件名を書いてしまう前に、一つ確認させてください。件名の仕事は、何でしょうか。

内容を要約すること、ではありません。開けてもらうこと。それだけです。ただし先に断っておくと、開けてもらえたかどうかを、私たちは正確には知れません(第14章のコラム「配信の開封率が指標に使えないわけ」)。件名の良し悪しは、開封率ではなく、その先のクリックや返信で確かめます。私は昔、件名を「今月のお知らせ:セミナー情報と新サービスのご案内ほか」のような、丁寧な目次にしていました。誠実なつもりでしたが、開封は伸びませんでした。目次型の件名は、開ける前に「読まなくても分かった気」にさせてしまうのです。件名は、本文への扉です。扉に部屋の全部を書く必要はありません。「開けてみたい」と思わせる一言が書いてあればいいのです。

具体・数字・問いかけ・自分ごと化

では、どんな扉なら開けたくなるのか。私が使っている型は四つです。

具体。「フォローのコツ」ではなく「交流会の翌日に送る、最初の3行」。数字。「名刺1000枚をためた私が、最初に捨てた習慣」。問いかけ。「その名刺、先週のままになっていませんか」。自分ごと化。読み手の状況をそのまま言い当てる、「『あの人に連絡しなきゃ』が三日続いたら」。四つに共通するのは、ペルソナの実感との距離の近さです。お気づきのとおり、材料はまたしても第1章の生の言葉です。件名づくりに困ったら、うなずきの深かった言い回しを、そのまま件名にしてみてください。第8章の訴求軸の話と同じで、AIに四つの型で案を出させて選ぶのも、効率のいいやり方です。

煽り件名が信頼を削る

件名の話をすると、必ず出てくるのが煽りの誘惑です。「まだ〇〇してるんですか?」「知らないと損する」「残り3名」。たしかに、一時的に反応は取れることがあります。でも、思い出してください。開けてもらうことは目的ではなく、入口です。

煽りで開けさせて、中身が普通なら、読み手には「釣られた」という感情だけが残ります。これが数回続くと、あなたの名前を見ただけで開かれなくなる。件名で稼いだ一回を、信頼で支払っているのです。私たちのペルソナは、機械的な売り込みにうんざりしている人たちでした。その人たちに、煽りの件名は届きません。一時の数字より、「この人のメールは開けても大丈夫」という長期の信用。件名にも、ブランドの人格は宿ります。

12-2 最後まで読まれる本文構造:1メール1メッセージ

冒頭三行で読むか決まる

開いてもらえたら、次の関門は冒頭です。読み手は、最初の三行で「読むか、閉じるか」を決めます。

だから、冒頭に挨拶の定型文を並べるのは、もったいないのです。「いつもお読みいただきありがとうございます。さて、本日は」と始まるメールを、私も長年書いていました。いまは、いきなり場面から入ります。「先週の交流会で、名刺を34枚いただきました。さて、何枚に連絡したでしょうか」。件名で開けた人の期待に、最初の三行で応える。挨拶や名乗りは、なくして失礼になるものではありません。読み手の時間への敬意は、むしろ前置きの短さに表れます。

一通に言いたいことは一つ

本文の原則は、シナリオの一通一要素と同じです。1メール1メッセージ。一通で言いたいことは、一つだけ。

あれもこれも書きたくなる気持ちは、よく分かります。月一の配信なら、なおさら「せっかくだから」と詰め込みたくなる。でも、三つのことを書いたメールで、読み手が覚えているのは、たいていゼロです。一つのことを書いたメールだけが、一つ覚えてもらえます。書き終えたら、自分に問いかけてみてください。「このメールを読んだ人が、明日誰かに一言で話すとしたら、何と言うだろう」。答えが一言で出ないなら、まだ詰め込みすぎです。

短く改行し、リズムで読ませる

構造の最後は、見た目の話です。メールは、紙の手紙と違って、スマホの画面で読まれます。画面いっぱいの文字の塊は、読む前に閉じられます。

コツは、一つの段落を短くし、2〜3行ごとに空白行を入れること。一文も短めに切ること。そして、声に出して読んだときのリズムです。第6章でお話しした音読チェックは、メールでこそ効きます。読みやすいメールは、目で読んでいても、耳で聞いているようなリズムがあります。内容を磨く前に、まず見た目と リズムを整える。それだけで、最後まで読まれる率は目に見えて変わります。

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第13章 半自動配信という思想と実務

パーソナライズの階段の最上段、「関係性で合わせる」個別編集の世界へ。本書の名前の由来でもある、半自動配信の思想と実務です。シナリオで型化し、送信前に人が仕上げる。その具体的なワークフローをお見せします。

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この記事を書いた人

株式会社ねこすけの代表をしています。
2005年に創業しWebマーケティングを実践するためのコンサルティング、サイト構築、サイト運用、システム開発を行っています。
会員・顧客属性を利用したコンテンツ管理を得意としており、協会サイト、多ブランドのECサイト、会員向けコンテンツサイトなどを構築運営しています。Webマーケティングのパートナーがほしいと感じている方、ご相談ください。
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