序章で、丁寧に設計したシナリオほど読まれなくなっていく寂しさの話をしました。あのとき私が組んでいたのは、いま思えば「送り手の都合の順番」でした。1通目で自己紹介、2通目でサービス紹介、3通目で料金案内。私が言いたいことを、私の順番で並べていたのです。読み手の中で何が起きているかを、考えていませんでした。ステップ配信のシナリオ設計とは、通数や間隔を決めることではなく、読み手の中で起きる変化を設計することです。この章では、その設計図の描き方を、私の失敗作と現在形を比べながらお話しします。
11-1 シナリオ設計の基本:ゴールから逆算する
シナリオのゴールは一つに絞る
シナリオづくりの最初の問いは、「この一連の配信を読み終えた人に、どうなっていてほしいか」です。つまりゴールから始めます。
ここで、かつての私がやった失敗を白状します。一つのシナリオに、ゴールを三つも四つも詰め込んだのです。サービスも知ってほしい、セミナーにも来てほしい、SNSもフォローしてほしい。結果、どの通も「ついでのお願い」だらけになり、読み手は何をすればいいのか分からないまま流れていきました。第3章の「各ステージの目的はひとつだけ」と同じ原則が、ここでも効きます。一つのシナリオに、ゴールは一つ。私のレベルチェック後のシナリオなら、ゴールは「40問の半自動レベル診断を受けて、自分の学習マップを手に入れてもらう」。それだけです。
逆算設計:成約から最初の一通へ
ゴールが決まったら、逆から並べます。ゴールにたどり着く直前の人は、何が分かっていて、何を感じている必要があるか。その一歩手前は。さらに手前は。
たとえば、ゴールが「個別相談を申し込んでもらう」なら、その直前の人は「自分の課題がはっきりしていて、この人に相談する価値があると感じている」状態のはずです。ではその手前は、「課題は見えたが、一人でやるか相談するか迷っている」。さらに手前は、「課題に気づき始めた」。こうして逆にたどると、各通が「どの状態からどの状態への橋か」が決まります。順番に思いついた話を並べるのではなく、状態の変化を橋でつなぐ。これが逆算設計です。
全体像を一枚の図にする
逆算ができたら、シナリオの全体像を一枚の図にします。凝ったものでなくて構いません。左端に「登録直後の状態」、右端に「ゴールの状態」、その間に各通を四角で並べ、それぞれに「この通の役割」を一言ずつ。
一枚にする理由は、二つあります。一つは、書き始める前に穴が見えること。状態と状態の間の飛躍、つまり「この一通でそこまで変わらないだろう」という無理が、図にすると一目で分かります。もう一つは、あとで直すときの地図になることです。第14章で配信データを見て改善するとき、どの橋で人が渡れずにいるかを、この図の上で探すことになります。設計図のない改善は、暗闇の手探りです。
11-2 パーセプション段階×コンテンツの対応表
段階ごとに伝えるべきこと・伝えてはいけないこと
逆算の物差しになるのが、第3章でお話ししたパーセプション、つまり課題への認知の段階です。登録してくれた人は、課題に気づき始めた段階の人もいれば、すでに解決策を探している段階の人もいます。段階によって、伝えるべきことと、伝えてはいけないことが変わります。
課題に気づいていない〜予兆の段階の人に伝えるべきは、あるある話と、「それには名前と原因がある」という発見です。伝えてはいけないのは、解決策の詳細と売り込み。まだ「自分の話」になっていないからです。課題がはっきりした段階の人には、原因の構造と、解決の方向性を。自分ごとになって解決策を探している段階の人には、具体的な方法、事例、そして選択肢の比較を。決めようとしている段階の人には、背中を押す情報、つまり手順や、よくある不安への答えを。段階が進むほど、具体で実務的な内容が歓迎されるようになります。
「知ってもらう」通と「信頼してもらう」通は別物
ここで、第3章の二軸の分離を、シナリオに当てはめておきます。いま述べた段階の設計は、パーセプション、つまり課題への認知を進める設計です。でも、それだけでは人は動きません。もう一つの軸、あなたという人への信頼が、並行して育つ必要があります。
大事なのは、信頼は「信頼してください」という通では育たない、ということです。信頼を育てるのは、各通の中身と振る舞いです。約束した頻度で届くこと。役立つものが売り込みなしで届くこと。失敗談も含めて正直に書かれていること。文体が一貫していること。つまり、課題認知はシナリオの「筋書き」で進め、信頼は全通に流れる「態度」で積む。二つの軸は、設計の場所が違うのです。ここを混ぜて「仲良くなってから売る」とだけ考えていたのが、昔の私でした。仲良くなっても、課題認知が進んでいなければ、売る場面は永遠に来ません。
段階を進めるトリガーの置き方
段階の設計をすると、知りたくなることがあります。「この読者は、いまどの段階まで進んだのか」。実は、配信の中に、それを教えてくれる仕掛けを置けます。トリガー(引き金)です。
たとえば、課題の構造を説明した通に「詳しい事例はこちら」のリンクを置く。クリックした人は、課題が自分ごとになり始めている可能性が高い。診断への案内をクリックした人は、現在地を知りたくなっている。つまり、リンクのクリックは、読者の段階が進んだ合図として使えるのです。この合図を拾って個別のフォローにつなげる話は、第20章と第30章で詳しく扱います。ここでは、各通に「段階が進んだ人だけが押したくなるリンク」を一つ置いておく、とだけ覚えておいてください。
次の章へ
第12章 開封され、読まれ、動いてもらう — メールライティング
設計図ができたら、一通一通の書き方です。件名、本文、締めの一文まで。読まれるメールと流されるメールの違いは、才能ではなく型でした。
