第4章で「発信は週に一度の仕込みで半自動に」とお話ししました。正直に言うと、AIを使い始める前の私は、その仕込みの日そのものが重くなって、結局止まってしまったことがあります。段取りを決めても、書くのは自分だからです。いまは違います。月曜の1時間の中で、今週のコラムの骨子とメールの下書きまで進められるのは、隣にAIという相棒がいるからです。この章では、ネタ出し、下書き、分析、推敲という発信の4つの場面で、私が実際に回しているAIとの分担を、プロンプト(AIへの指示文)ごとお見せします。コラムでも、メールでも、SNSの投稿でも、分担の考え方は同じです。
6-1 ネタ出し・企画:AI壁打ちで発信テーマを量産する
ネタ出しプロンプトの基本型
第4章で、三軸(専門・人柄・地域)の棚卸しをしました。AIは、この棚卸しの相手として優秀です。ただし、渡し方にコツがあります。「発信ネタを出して」とだけ頼むと、どこかで見たような一般論が返ってきます。私も最初はそれで「AIは使えない」と早合点しました。使えなかったのは、私の渡し方でした。
コツは、自分の価値定義とペルソナを、毎回きちんと渡すことです。
私は「交流会には出ているが、その後のフォローがそのままになっている
一人経営者」に向けて発信しています。
【読者の状況】
交流会から帰った夜、名刺を机に置いて「明日お礼を送ろう」と思うが、
翌日は仕事で手いっぱいになり、三日後に名刺を見て後ろめたくなる人。
【依頼】
この読者が「自分のことだ」と感じる発信テーマを、
以下の3つの軸で10個ずつ出してください。
1. 専門軸(フォロー・仕組み・半自動の話)
2. あるある軸(読者の日常の小さな場面)
3. 質問軸(読者に「ある・ない」を聞く問いかけ)
奇抜さより、実感への近さを優先してください。
一つの体験を十本のネタに増やす
ネタ出しでもう一つ強力なのが、「増やす」使い方です。ゼロから出させるのではなく、自分の体験を一つ渡して、切り口を増やしてもらう。
たとえば、交流会で名刺を30枚もらった、という一つの体験。これをAIに渡して「この体験から書ける投稿の切り口を10個」と頼むと、枚数の話、その後のフォローの話、名刺のデザインの話、30秒自己紹介の話、と広がります。体験はあなたにしかない一次情報で、切り口の展開はAIの得意分野。この分担なら、生成される文章がどれだけ増えても、核には必ずあなたの体験がある。「AIっぽい発信」にならない一番の予防策は、実は最初のネタの段階にあります。
ペルソナの悩みからの逆算生成
三つ目の使い方は、検索語からの逆算です。第5章で、ペルソナの検索語を10個書き出しました。その一つひとつをAIに渡して、「この言葉で検索する人は、直前に何があって、何を知りたいのか」を書き出してもらうのです。
「交流会 フォロー 続かない」で検索する人の、検索直前の場面。それが具体的に描ければ、投稿の書き出しはほぼ決まります。私はこの逆算を、ブログ記事の企画にも使っています。AIの答えが自分の実感とずれていたら、それも収穫です。ずれを直す過程で、自分がペルソナの何を分かっていなかったかが見えてきます。壁打ちの価値は、正解をもらうことではなく、自分の解像度が上がることにあります。
実際にやってみると、こんな具合です。「名刺管理 アプリ どれ」という検索語を渡すと、AIは「名刺が増えて管理に困り、まずアプリを比較しようとしている人。ただし本当の困りごとは管理そのものではなく、その先の連絡かもしれない」と返してきます。この「本当の困りごとは、その先かもしれない」という視点は、私の実感とも一致していました。アプリを入れて満足し、連絡は結局していない人を、私は何人も見てきたからです。そこで投稿は「アプリの比較」ではなく、「アプリを入れたのに連絡が増えない理由」から書き始める。検索語の一歩奥にある実感を書けたとき、投稿は「調べもの」ではなく「自分の話」として読まれます。
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発信で「知ってもらう」仕組みができたら、次は第3部「フロント」です。知ってくれた人が、売り込まれる心配なく一歩踏み込める入口。診断、小冊子、セミナー。私の入口が「診断」である理由からお話しします。
