第19章で、毎朝「今日連絡する人」の一覧を見る習慣をお話ししました。ただ、一覧に名前が出ても、手が止まる日があります。「この人に、次に何を話せばいいのだろう」。連絡すべきなのは分かっている。でも、用件がない。私も長いあいだ、この「話題の壁」の前で連絡を先送りしてきました。いまは、この壁の前に、AIという相談相手が座っています。記録を材料に、次の一手を一緒に考えてくれる相棒です。この章では、CRMとAIの組み合わせ方を、私が毎週使っているプロンプトごとお見せします。
21-1 AI壁打ちで「この人に次に何を話すか」を考える
相手情報を渡して話題を出させる
第15章で、AIは「代わりに書く人」ではなく「下書き係と分析係」だとお話ししました。CRMの世界では、もう一つの役割が加わります。壁打ち相手です。
やることは単純で、その人の記録をAIに見せて、「この人に次に連絡するなら、どんな話題がありえるか」を一緒に考えるのです。出会いの経緯、最終接触日、前回話したこと、望む関係性、三行メモ。第17章で設計した記録が、ここで材料として生きてきます。一人で考えると、「仕事の案内しか思いつかない」状態に陥りがちです。売る話しかない気がして、だから連絡できない。AIに壁打ちすると、前回の話題の続き、季節の話、相手の業界の動き、共通の知人と、選択肢が机に並びます。並んでみると気づくのです。売る話以外の入口は、いくらでもあった、と。
壁打ちプロンプトの型
私が使っている型を、そのまま載せます。コピーして、あなたの記録に差し替えて使ってください。
あなたは、ひとり経営者の営業アシスタントです。
以下は、私が大切にしたい方の記録です。
【相手の記録】
- 名前・仕事: ◯◯さん(社労士・ひとり事務所)
- 出会い: 2026年4月、地域の交流会で名刺交換。1on1を1回実施
- 最終接触: 6月に私のお便りへ返信をもらい、お礼を返した
- 前回の話題: 顧問先への案内文づくりに時間がかかっている
- 望む関係性: 情報交換を続けたい。将来は仕組みづくりの相談相手に
- メモ: お子さんの部活の話をよくされる。文章を書くのは好き
【依頼】
この方に今週連絡するとして、売り込みにならない自然な話題の
候補を5つ、それぞれ一言の理由つきで挙げてください。
前回の話題の続きを最低1つ含めてください。
大事なのは【依頼】の縛り方です。「売り込みにならない」「前回の続きを含める」と条件をつけることで、提案の質が安定します。第33章で詳しくお話ししますが、AIへの依頼は、条件の付け方が半分です。
提案の採否は関係を知る自分が決める
AIの提案は、たいてい5つのうち2つが使え、3つはずれます。この打率を、私は問題だと思っていません。
ずれる理由ははっきりしています。AIが知っているのは記録に書いたことだけで、関係の空気は知らないからです。「その話題は、あの人には軽すぎる」「この提案は、いまの距離感では踏み込みすぎ」。それが分かるのは、実際に会ってきたあなただけです。だから、役割分担はこうなります。選択肢を広げるのがAI、選ぶのが自分。第20章の「最後の一手は、いつも人」と同じ原則が、話題選びにも通っています。逆に言えば、採否を自分で決めている限り、AIをどれだけ使っても、連絡が機械的になることはありません。
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記録と仕組みが回り始めたら、いちばん近くにいる人たち、すでにお客様になってくれた方々との関係を深める番です。新規を追う前に、足元にある信頼を育てる話をします。
