「発信しなきゃとは思うんです。でも、何を書けばいいのか」。この言葉を、私は何度も聞いてきましたし、何度も自分で口にしてきました。頑張って毎日投稿した時期もあります。フォロワーは少し増えました。でも、仕事の相談は来ませんでした。認知の仕組みづくりで私が遠回りして学んだのは、ひとりビジネスの認知は「たくさんの人に知られること」ではなく「必要なときに思い出してもらえること」だ、という一点です。この章では、露出の量を追わずに見つけてもらう、認知戦略の設計を一緒に考えていきます。
4-1 ひとりビジネスの認知は「露出量」より「想起される文脈」
有名になる必要はない
まず、肩の力を抜くところから始めさせてください。あなたは、有名になる必要はありません。
第2章で計算したとおり、ひとりで受けられる仕事は月に数件です。何万人に知られても、受けられる量は変わりません。私も昔は「もっと多くの人に知ってもらわなければ」と焦っていましたが、冷静に考えれば、必要なのは、私の課題領域で困っている人が、困ったその瞬間に私を思い出してくれることだけでした。認知の目標を「有名になる」から「必要な人に、必要な瞬間に思い出してもらう」に置き換える。この置き換えだけで、発信の悩みの半分は消えます。何万人ではなく、あの一人に届けばいい。そう思えると、発信はずっと気楽になります。
「フォロワーが少ないのが恥ずかしくて、発信に腰が引ける」という相談も、よく受けます。その気持ちも分かります。でも、思い出してください。あなたの読者は、フォロワー数を見てあなたに頼むのではありません。投稿の中身を見て、「この人は自分のことを分かってくれそうだ」と感じて頼むのです。フォロワー100人でも、その中にペルソナが10人いれば、それは1万人の雑多なフォロワーより強い100人です。
「◯◯といえばあの人」の作り方
思い出してもらう、を分解すると、「◯◯といえばあの人」という記憶の紐づけになります。この紐づけは、どうやってできるのでしょうか。
私の経験では、材料は二つです。一つは、第1章でつくった価値定義の一言。「交流会のフォローといえば」「一度会った人を仕事に変えるといえば」という、紐づけの左側です。もう一つは、繰り返しです。同じ紐づけを、発信でも、自己紹介でも、プロフィールでも、何度も何度も見せる。人の記憶は一回では紐づきません。私が「一度会った人」の話を、投稿でもスピーチでも懲りずに繰り返しているのは、飽きられるのが怖くないからではなく、繰り返した数だけ紐づけが強くなると知っているからです。実際、飽きるほど繰り返してようやく、「そういえば福井さんがそんな話してたな」と連絡が来るようになりました。
紐づけが育っているかどうかは、確かめられます。方法は簡単で、しばらくぶりに会った人に「私、何の人だか覚えてます?」と笑いながら聞いてみるのです。「えーと、Web系の……」なら、まだ紐づいていません。「一度会った人、の人でしょう」と返ってきたら、育っています。私はこれを、交流会の雑談の中で時々やっています。少し勇気の要る質問ですが、どんなアクセス解析よりも正直な、認知の実測値です。
想起の文脈を一つに絞る
ここで、以前の私がやっていた失敗をお話しします。紐づけの左側、つまり「◯◯といえば」の◯◯を、欲張って何個も持とうとしたのです。ホームページといえば。集客といえば。AIといえば。全部で思い出してもらえたら最強だ、と。
結果は、どれでも思い出してもらえない、でした。記憶の紐づけは、一人につき一本がやっとです。三本張ろうとすると、三本とも細くなる。だから、想起の文脈は一つに絞ります。絞る基準は、第1章の価値定義です。あなたのペルソナが、困った夜に検索する言葉。その文脈の「あの人」になる。他の話題を発信してはいけないわけではありません。ただ、「この文脈だけは誰にも譲らない」という一本を決めて、そこに繰り返しを集中させる。細い三本より、太い一本。これが、露出量で勝てないひとりの認知戦略です。
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戦略が決まったら、チャネルごとの実践です。SNSの文化への馴染み方から、ひとり企業でも使えるプレスリリースまで、私が実際に回している運用をお見せします。
