1on1(一対一で、互いの商売と人柄を知るための面談)は、交流会の喧騒の中では届かない深さまで、関係を一気に進めてくれる時間です。私はBNIに入って、この1on1を数え切れないほど重ねてきました。最初のころは、正直、何を話せばいいのか分からず、気づけば自分のサービス説明会にしてしまったこともあります。この章では、その失敗から学んだ1on1の設計、目的、準備、進め方、そして終わったあとの動きまでを、実務の手順としてお話しします。
26-1 1on1の目的設計:売る場ではなく相互理解の場
1on1の成果は「相手を語れるようになる」こと
1on1の目的を、私はこう定義しています。終わったあとに、相手の商売を、自分の言葉で人に語れるようになること。
「◯◯さんは、△△で困っている人を、こういう考え方で助けている人です。とくにこういう方がいたら、ぜひ紹介したい」。ここまで語れたら、その1on1は大成功です。逆に、一時間話して、相手の商売を一文で説明できないなら、話題がどれだけ弾んでいても、成果としては物足りない。なぜこの定義なのか。第23章でお話ししたとおり、継続的な場では、紹介はお互いの理解の深さから生まれるからです。あなたが相手を語れるほど、相手への紹介が出せる。相手があなたを語れるほど、あなたへの紹介が届く。1on1は、その「語れる度」を上げる時間なのです。
売り込みの気配が場を壊す
1on1で、いちばんやってはいけないこと。それは、商談にすり替えることです。
相手は、互いを知る時間だと思って来ています。そこで売り込みが始まると、招かれた食事会で保険の勧誘が始まったときのような、あの空気になります。話は最後まで聞いてもらえるかもしれません。でも、その人との1on1は、二度目がない。そして第23章でお話ししたとおり、狭い場では、その振る舞いが静かに共有されます。私自身、序盤に熱く語りすぎて、相手の相づちがだんだん薄くなっていった1on1を、いまも覚えています。売りたい気持ちは、あって当然です。ただ、この場のゴールは成約ではなく相互理解だと、始まる前に自分に言い聞かせておく。ゴール設定が、話す内容も配分も決めてくれます。
相互理解の先に紹介と依頼がある
「売らないなら、1on1は商売にどうつながるのか」。当然の疑問ですが、つながり方は二つあります。しかも、売り込みより太い道です。
一つは、紹介です。あなたの商売と人柄を深く知った相手は、あなたの営業担当になってくれます。相手の人脈の中で「それなら、いい人を知っていますよ」と、あなたの代わりに語ってくれる。もう一つは、相手自身からの依頼です。相互理解の過程で、相手があなたの専門性に触れ、「実はうちも、その件で困っていて」と、向こうから課題を打ち明けてくれることがあります。このとき初めて、場は商談の入口に変わります。大事なのは、順番です。こちらから売りに行くのではなく、理解が深まった結果として、紹介と相談が向こうからやってくる。第22章のレビュー面談と同じ構造が、ここにもあります。
次の章へ
相互理解が深まり、相手から課題が語られたら、いよいよ商談です。売り込まずに、相手の意思決定を助ける。セールス面談の設計と技術に進みます。
