ここから最終部、AI活用の実務大全です。本書はここまで、各章の現場でAIを使ってきました。発信の下書き、分析、壁打ち、ロールプレイ。最終部では、それらを一つの設計思想にまとめ直します。というのも、AI活用で悩む方の相談は、たいてい「どのツールがいいか」から始まるのですが、本当に決めるべきことはその手前にあるからです。何を任せ、何を任せないか。この章では、ひとりビジネスのAI活用の全体地図を描き、線引きの基準、道具の選び方、お金の目安、そしてデータの扱いまで、運用の土台を固めます。
32-1 業務別AI活用マップ:どこにAIを入れ、どこに入れないか
コンテンツ・分析・顧客理解・事務の四領域
まず、ひとり経営者の営業まわりの仕事を、AIの観点で四つの領域に分けます。
一つ目、コンテンツ制作。配信の下書き、コラム、診断や小冊子、自己紹介の原稿(第8・15・29章)。二つ目、分析。配信データ、投稿の反応、CRMの俯瞰、商談の振り返り(第14・21・27章)。三つ目、顧客理解。壁打ちによる話題出し、議事録の要約、ペルソナとの対話(第1・21章)。四つ目、事務変換。名刺OCR、文字起こし、フォーム整理(第21・29章)。こうして並べると、本書でお話ししてきたAI活用のすべてが、この四領域のどこかに収まっていることが分かります。そして、四領域に共通するのは、どれも「材料を渡すと、加工して返してくれる」仕事だということ。AIは、材料の加工者なのです。
効果の大きい順に導入する
四領域を一度に始める必要はありません。導入の順番は、効果の大きい順、つまり「いま、あなたの時間をいちばん食っている領域」からです。
発信が重くて月一の配信すら滞っているなら、コンテンツ制作から。数字を見る習慣がなくて改善が回っていないなら、分析から。名刺の山が積み上がっているなら、事務変換から。判断材料は、第31章の運用リズムの中で、どの工程で手が止まっているかです。逆に、うまく回っている領域に、わざわざAIを入れる必要はありません。道具の導入自体が目的になると、設定と学習に時間を食われ、本末転倒になります。AIは全部に入れるものではなく、詰まっている場所に差すものです。
自分の一週間をAI観点で棚卸しする
自分の詰まりがどこかを知る、簡単な方法があります。一週間、自分の営業まわりの作業を、ざっくり記録してみるのです。
書き出したら、それぞれの作業に三つの印をつけます。「AIに任せられる(下書き・要約・変換)」「AIと一緒にやる(壁打ち・分析)」「自分にしかできない(会う・話す・決める)」。この棚卸しをすると、たいてい二つの発見があります。一つは、「任せられる」作業に、想像以上の時間を使っていたこと。もう一つは、「自分にしかできない」時間、つまり人と会い、話す時間が、想像以上に少なかったことです。AI活用の目的は、この比率を変えることに尽きます。作業の時間を減らし、人の時間を増やす。効率化して浮いた時間で作業を増やすのではなく、浮いた時間を、一人ひとりに返すのです。
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第33章 プロンプトの技術 — 壁打ち・生成・添削・分析の型
設計ができたら、次は腕前です。AIへの頼み方、プロンプトの技術を、本書で使ってきた実例をほどきながら、型として身につけます。
