最近、「マーケティングにAIを活用する講座」をいくつか請負で行っています。
扱うテーマは「AIの使い方」そのものよりも、むしろ「AIをどう活かすか」という視点に重点を置いています。
AIは便利ですが、依存してしまうと発想が狭まったり、自分で考える力を失ってしまいかねません。だからこそ大事なのは、まず自分の頭で考えること。そのうえでAIを活用すれば、視点が広がり、漏れを防ぎ、より充実した戦略が立てられるのです。
「AIで何ができるか」は常に変化する
AIでできることは日々アップデートされています。昨日まで不可能だったことが今日にはできるようになり、今便利なものも数年後には当たり前になってしまいます。
そのため、私は講座でも「過去・現在・未来」に分けてAIとマーケティングの変化を整理するようにしています。
- 過去:人手中心、広告や営業は属人的、データ活用は大企業の特権
- 現在:生成AIの普及で、コピー、画像、分析が誰でも実行可能
- 未来:AIが自律的にシナリオを設計し、顧客ごとに最適化
流れを俯瞰すると、「今すぐ実行すべきこと」と「未来に備えるべきこと」が明確になります。
100個のアイデアは出る、でも…
実際にAIに「中小企業でもAIをマーケティングに活用する方法を100個あげてください」と入力すると、驚くほど多様な施策案が返ってきます。
コピーライティングから画像生成、SNS、メール、データ分析まで幅広く、まさに「なんでもAIでできる」時代を感じます。
ただしここに大きな落とし穴があります。
- 優先順位がついていない
- 目的が曖昧なまま施策だけが並んでいる
- 自社の立ち位置やリソースが考慮されていない
つまり、「やれることリスト」にはなりますが、それが「やるべきこと」なのかは別問題なのです。
むしろ100個並んでしまうことで、どこから手をつけるべきか迷い、結局動けなくなる危険性もあります。
整理に役立つ「トリーズの9画面法」
そこで私がよく使うのが トリーズの9画面法 です。
「上位・システム・下位」×「過去・現在・未来」という9つの枠に分けて考えることで、ついつい広がりすぎる発想も「いま自分はどこを議論しているのか」が明確になります。
トリーズの9画面法を使うメリット
- 俯瞰できる:自分の課題が「過去」「現在」「未来」のどこに属しているのか整理できる
- 抜け漏れ防止:目の前の課題だけでなく、背景や将来を同時に考えられる
- 視点の転換:問題を「上位システム」「下位システム」から見ることで新しい気づきが得られる
- 優先順位づけ:どの施策が今の自社にとって重要なのか見極めやすい
- 議論の整理:チーム内で考えがバラバラになっても、9つの枠に当てはめれば論点がそろう
つまり、100個の施策リストのように「情報が多すぎて迷う」場面でも、9画面法を使えば自然と筋道が見えてくるのです。
AIは道具、考えるのは自分
結局のところ、AIは「答えをくれる魔法の箱」ではなく、あくまで道具です。
考えるのは自分であり、AIはその思考を広げ、整理し、補完するためのサポート役に過ぎません。
だからこそ、AIに施策を100個出させて満足するのではなく、
- 自社の目的は何か
- 立ち位置はどこか
- どの順番で実行すべきか
を整理したうえで活用する必要があります。
そのためのフレームワーク活用は、思考を導き出すうえで有益なツールとなります。
トリーズの9画面法にこだわる必要はありませんが、AIの進化が著しい今だからこそ、得られた回答が未来においても有効かどうかを含めて考えられる手段を備えておく方が安心でしょう。